「器つれづれ」 白洲正子・藤森武(撮影) [世界文化社]
白洲正子氏が普段お使いだった器を一冊にまとめた随筆写真集
写真と文章が入り交じった、大人の絵本といった感じの本
写真をぱらぱらめくっているだけでも楽しいし
随筆を読みながら写真を見ると、より感興が深まります。
工芸品の写真集的な本も時々見ますが、やっぱり著者によって
本から受けとる重みが違います。
とはいえ、普段家庭で使っているような器なので、肩がこらずに眺められ、和みます。
僭越な言い方になりますが、私好みの器ばかりで楽しいです。
民芸っぽい素朴な焼き物が多いです。
私、楽焼とか九谷とか、絵付けが派手なものは苦手で。
随筆の文章は書き下ろしではなく
それまでの白洲氏の著作から抜き出しの、アンソロジー的な一冊になっています。
欄外に編集者の注釈が入っていて
本文中の専門用語の説明がされているので
初心者にもわかりやすいです。
白洲正子氏の入門書としてぴったりなのではないでしょうか。
写真を眺めているとうっとりして、時間を忘れてしまいます。
美術館の陳列風レイアウトではなく、
お膳の上、畳の上、棚の中など普段使う時に近い状態で写されています。
時々花が飾ってあったりも素敵。
白州氏の暮らしぶりが伝わってくるような。
撮影者の趣味見識もうかがわれますね。
文章からも感銘を受けること、大。
白州氏は、日本近代の文化人と親しく交際した大人物だったんだなあ
と改めて感じ入りました。
印象に残ったのは民芸運動について。
編集者の注釈文より引用
著者(白洲氏)は古い下手物の美しさを発見した柳宗悦には敬意を抱いていたが、次第に「用の美」から離 れ、名利を求めがちな「民芸運動」に対しては、その内在的な矛盾を私的し、懐疑的な立場にいた。「民芸」は 愛したが、「民芸運動」は嫌いだった、と言えようか。
私は、日本民藝館を観覧して「民芸」に興味を持ち、宗悦氏の著作を少しは読みましたが、
なんとなくなじめないものを感じて深入りはしませんでした。
なるほど、こういうことだったんだな,、自分でも納得。
北大路魯山人について
たしかに彼は日々の暮らしを大切にし、愉しむことを知っている偉大な趣味人であった。・・・・・・・
魯山人逝いて既に十九年、今だから私も手放しでこういう賛辞が書けるのである。・・・・ひと口にいえば、ふつう いう意味での人間的な教養に欠いていたのである。
白洲氏の著作をもっと読んで
人となりをもっと知りたいと思います。