三月の歌 “古今和歌集より”
いたづらにすぐす月日はおもほえで 花みてくらず春ぞすくなき ふじはらのおきかぜ
春くればやどにまづさく梅の花 きみが千歳のかざしとぞ見る きのつらゆき
春日野にわかなつみつつ よろづよをいはふ心は神ぞ知るらん
うちわたす遠方人(おちかたびと)にもの申すわれ そのそこに白くさけるはなにの花ぞも
春されば野辺にまずさく見れどあかぬ花 まひなしにただ名のるべき花の名なれや
むめの花みにこそきつれ 鶯のひとくひとくといとひしもをる
春の日の光にあたる我なれど かしらの雪となるぞわびしき 文屋やすひで
霞たちこのめも春の雪ふれば 花なきさとも花ぞちりける きのつらゆき