仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「バカの壁」 養老猛司   [新潮新書]

しばらく前にベストセラーになったノンフィクション
 
表紙の紹介文より
 イタズラ小僧と父親、イスラム原理主義者と米国、若者と老人はなぜ互いに話が通じないのか。そこに「バカの壁」 が立ちはだかっているからである。いつの間にか私たちは様々な「壁」に囲まれている。それを知ることで気が楽に なる。世界の見方が分かってくる。人生でぶつかる諸問題について、「共同体」「無意識」「身体」「個性」「脳」など、 多様な角度から考えるためのヒントを提示する。
 
なるほど、いろいろ胸落ちする話の多い一冊です。
さすがベストセラー
 
これから社会に出ようとする、出たばかりの若者にお勧めしたいです。
混沌とした現代社会を生き抜くためのヒントになると思います。
 
 
 
私が印象に残ったのは
  第三章  「個性を伸ばせ」という欺瞞   です。
  このところとみに、「個性」とか「自己」とか「独創性」とかを重宝する物言いは増えてきた。文部科学省も、こと あるごとに「個性」的な教育とか、「子供の個性を尊重する」とか、「独創性豊かな子供を作る」とか言っていま  す。
  しかし、これは前述した「共通了解」を追求することが文明の自然な流れだとすれば、おかしな話です。明ら  かに矛盾していると言ってよい。多くの人にとって共通の了解事項を広げていく。これによって文明が発展して きたはずなのに、ところがもう片方では急に「個性」が大切だとか何とか言ってくるのは話がおかしい。

 「個性をのばせ」・・・この狭い日本において、本当にそんなことが求められているのか。
 混んだ銭湯でオリジナリティを発揮されたら困るだけ、と私は常々言っているのですが・・・。
 
全く同感です。
「個性」を尊重するというのは西洋的な価値観で
島国・農耕民族の日本人にはまったくそぐわないと思います。
 
「個性」とか「自己主張」が弱いのは日本人の欠点
という風に語られるのが一般的です。
でも、
いつでも自分の言いたいことを主張し、押し通すスタイルよりも
周囲の雰囲気を読み取って、場に応じた言動を行う、という方が
高度な活動であるし文化的だと思うんですけど。
 
 
 
本の中で、宗教に関する話も出てきます。
それがテロや民族紛争の原因にもなっています。
 
以前、宗教について考えてみたことがあります。
私自身はつまるところ神道的な価値観が根本にあるようで
それを望ましいと感じます。
 
日本人全体についても同様に感じるのですが。
神道多神教は包容力の高い価値観で
そこが日本人は宗教に無節操だと言われる由縁なのだと
思います。
 
でも真のグローバル、国際化とは、そういった考え方なのではないでしょうか?
社会にはさまざまな神=価値観があり、どれも尊重すべきだと認めるという。
島国日本は、他国からの侵略を(ほとんど)受けずに一国の形を守ってきただけに
ある意味、文化的に成熟度が高いといえると思います。
 
 
これから世界に対して日本をアピールする場合、
経済力ではなく、グローバリズムを体現してきた伝統的な文化・価値観を
推してはどうでしょうか。