仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「更級日記」   菅原孝標女

 
改めて読んだら意外とはまりました。
蜻蛉日記和泉式部日記みたいに、
男女の愛憎どろどろ話ではないので、うんざりしません。
文学少女同士の共感もあります。
 
小市民の地味な女性の平凡な人生を淡々と語っているという感じで
私小説的おもしろさがあります。
脚色して小説とかドラマにしたら、地味にヒットしないかなあ。
 
 
作者 菅原孝標女は、菅原道真 5代目の孫で
蜻蛉日記の作者右大将道綱母の姪。
 
学者の家系で文学的血筋に生まれてはいますが
下流貴族で地位も財産もなく、派手な事件など何も起こらない生涯です。
 
 
世渡り下手な父は、望みの任官を得られず不本意な地方暮らしが続きます。
田舎で育った作者は母の影響で文学好きな夢見る少女に育ちます。
地方ではなかなか手に入らない物語本を、京に帰ってやっと読みあさることができます。
(親戚のおばさんがどさっとくれたのです。この辺はやっぱりお家柄)
 
物語の世界にひたりきった作者は
「大人になったら美女になって、光源氏のような殿方が迎えにきてくれる」という
妄想にどっぷり。
現実的な努力を何もせず、「いつか王子様が」的な夢にひたっている
痛さ加減は身につまされるものがあります。
 
 
 
現実は、というと、
早世した姉の遺した子供たちを育て、母も亡くす。
昔気質な親は、娘を女房として宮仕えにもだしたがらず、
結婚の話もなく適齢期を過ぎ、でも子育てには追われている。
 
父は、娘との今生の別れを覚悟しつつ、地方へと単身赴任。
数年後、父が無事帰ってきたのはよいが
すっかり老け込んで、娘に頼りきる有様。
 
ハイミスの年齢になってから、初めて女房勤めにつくが
なかなか新しい環境にもなじめない。
それでも慣れてきてこのまま勤めを続けていれば
キャリアウーマンの道も開けるかというところで
親が結婚を決めてしまい、家庭に入る。
 
子供も育ち、安定した家庭生活を送るものの
最後は夫の急死で終わる、という。
 
 
 
 
人生行路が似ている訳ではないのですが
な~んか、身につまされるものが・・・・
女の人生のやるせなさが語られているとでもいうのか。
 
世のお一人様の女性の皆様の共感を呼ぶ、
んじゃないかなあ??