六月の歌 ‘古今和歌集より’
五月雨に物思ひをれば 郭公 夜ふかく鳴きていづちゆくらむ
五月雨の空もとどろに 郭公 なにをうしとか夜ただ鳴くらん
かずかずに思ひ思はず問ひがたみ 身を知る雨はふりぞまされる 在原業平
色みえでうつろふものは 世の中の人の心の花にぞありける こまち
難波潟潮みちくらし 雨衣たみのの島にたづ鳴きわたる
明けぬとてかへる道には こきたれて 雨も涙もふりそぼちつつ
あしひきの山下水の 木隠れてたぎつ心をせきぞかねつる
たぎつ瀬のなかにも淀はありてふを などわが恋の淵瀬ともなき
朝な朝な立つ川霧の そらにのみうきて思ひのある世なりけり