二月の歌 ‘小倉百人一首より’
忘らるる身をば思はず誓ひてし 人の命の惜しくもあるかな 右近
今はただ思ひ絶えなむとばかりを 人づてならで言ふよしもがな 右京太夫道雅
思ひわびさても命はあるものを 憂きにたへぬは涙なりけり 道因法師
ながらへばまたこのごろやしのばれむ 憂しとみし世ぞ今は恋しき 藤原清輔朝臣
見せばやな雄島のあまの袖だにも ぬれにぞぬれじ色はかはらず 殷富門院大輔
人も惜し人も恨めしあぢきなく 世を思ふゆゑに もの思ふ身は 後鳥羽院
わたの原八十島かけて漕ぎ出ぬと 人には告げよ海人の釣舟 参議 篁
筑波嶺の峰より落つる男女川 恋ぞつもりて淵となりぬる 陽成院
難波潟みじかき芦のふしの間も 逢はでこの世を過ぐしてよとや 伊勢
契りきなかたみに袖をしぼりつつ 末の松山波越さじとは 清原元輔
逢ふことの絶えてしなくはなかなかに 人をも身をも恨みざらまし 中納言朝忠