仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「情事」 森瑤子  [集英社文庫]

森瑤子さんの作品、読んでみました。
処女作で、すばる文学賞をとった短編です。
 
フランス文学を連想するような文章です。
 
 
私なりにストーリーをまとめると
  夫婦関係に倦怠を覚える33歳の女性が
  憂さ晴らしに一夏の浮気をして終わる話。
といってしまうと身も蓋もないなあ
 
 
感想を一言でまとめると
  「美魔女」の思想を小説にするとこんな感じ?
つまり、まったく共感ができないんです。
 
 
主人公の女性の抱える問題は「喪失感」
対象は、夫との間の熱烈な愛情と
自分の「若さ」。
 
 
最も共感できない点は「若さへの盲信」です。
 
夕日の美しい情景を見ても新鮮な感動を覚えることがなくなったことに
主人公はショックを受け、若さを失ったことを感じます。
 
夕日に感動できなくなっても、寺社や伝統文化の良さを感じられるようになれば
いいじゃない、というのが私の言い分です。
いつまでも「若さ」にしがみつくのは精神的に成熟しないからだと思ってしまいますね。
 
 
 
 
それから、
愛情が感じられなくなった夫と生活を継続するためには
無関心になるしかない、と思い決めます。(そのはけ口が浮気)
「夫婦はいつでも愛し合っていなければならない」と私は思いませんが
(だって、疲れるし) そこは個人の価値観なのでいいです。
 
でも、この主人公、小学生の娘がいるんですよね。
未成年の子どもを持っているなら、自分の人生は後回しでしょ
と思うんですけど。
 
物語中、娘は名前しか出てきません。
実在の人物としての描写はされません。
「美魔女」にとっての子どもの存在感というのは
これかなと思いました。
勉強になりました。