仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「森鴎外」      ちくま日本文学全集文庫

昔から、夏目漱石が好きなので
森鴎外は好きじゃないです。

固定観念にとらわれているのかなという気もしてましたが
今回改めて読んでみて
やっぱりそうでした。


漱石と鴎外の違い】
・在野(民間):役人(官憲)
・ユーモア感覚
・エンターテイメント性




鴎外は陸軍省医務局長という地位まで昇った官僚で
「お上とはひれふすもの」という姿勢の人。
漱石は権威というものをちゃかすタイプ。


まあ、そこは価値観の違いとしておいておくとしても
読んでおもしろくない原因は、ユーモア感覚のなさ。
漱石も暗~いストーリーの作品はあるけど
文章の中にユーモアがあるので
ひたすらうんざりするということはない。



そして、文学作品としての欠陥は
エンターテイメント性の欠如。
おもしろおかしく書けということじゃなくて
作品としてのオチをつけろ、といいたい。

実際の事件を記録したという体裁の小説は
松本清張も書いたけど
実録風でありながら、最後にオチはあったので
読み終わった時すっきりできるんですけど
鴎外はそれがない。
役所の文書のようにただ記録したというだけの文章。
さすが役人。

期待して見た映画やDVDがつまらなくて
それでもガマンして見てたら最後までつまらなかった、
「金返せ」といいたくなるような読後感です。
      [例]山椒大夫、魚玄機





お勧めできるとしたら「高瀬舟
人間性というものについての真理を
ついていると思います。

とりたてて不都合はない生活なのに
幸福感が得られないという現代病の方に
お勧め。



あとは「舞姫
明治の名作に数えられる作品です。
確かに文章は格調高い。

しかし、内容といったら
甘ったれのモラトリアム若僧が
異国の少女を不幸のどん底に突き落としておきながら
なお自分の不幸に酔っているという
後ろから蹴飛ばしたくなるストーリーでございます。