二月の句 ‘松尾芭蕉の俳句’
盛りなる梅にす手引く風も哉
我も神のひさうやあふぐ梅の花
此の梅に牛も初音と鳴きつべし
梅柳さぞ若衆哉女かな
旅がらす古巣はむめに成りにけり
初春先づ酒に梅売るにほひかな
世にゝほへ梅花一枝のみそさゝ“い
梅白し昨日ふや鶴を盗まれし
るすにきて梅さへよそのかきほかな
さとのこよ梅おりのこせうしのむち
わするなよ藪の中なるむめの花
あこくその心もしらず梅の花
香にゝほへうにほる岡の梅のはな
梅の木に猶やどり木や梅の花
御子良子の一もとゆかし梅の花
手鼻かむ音さへ梅のさかり哉
暖簾のおくものぶかし北の梅
紅梅や見ぬ恋作る玉すだれ
梅が香やしらゝおちくぼ京太郎
梅若菜まりこの宿のとろゝ汁
山里は万歳おそし梅の花
月待ちや梅かたげ小山ぶし
かぞへ来む屋敷 ゝ の梅やなぎ
人も見ぬ春や鏡のうらの梅
蒟蒻のさしみもすこし梅の花
春もやゝけしきとゝのふ月と梅
梅がゝや見ぬ世の人に御意を得る
むめがゝにのつと日の出る山路かな
梅が香に昔の一時あはれ也
むめが香に追いもどさるゝ寒さかな
水とりや氷の僧の沓の音