仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

‘仏像の姿 -微笑む・飾る・踊るー‘    三井記念美術館(日本橋)


11月25日(日)まで開催中の特別展です。

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「特別展」と銘打っていますが、本当に特別でした。

おそらく従来の仏像展にはなかった新機軸の企画だと思います。

仏像に興味のある方にはぜひお勧めです




副題の「仏師がアーティストになる瞬間」という通り
制作者側から見たテーマ設定となっています。

仏像鑑賞の視点はまず
信仰の対象として、芸術作品として
の二つに分かれると思います。

美術展であれば、芸術作品としての視点ということになりますが
従来の展覧会であれば
作者別、時代別、設置場所別というような種別で行っていると思います。

ですが、この展は違います。
「顔」「装飾」「動きとポーズ」という三つのテーマを設定し
新しい角度からの鑑賞を来場者に提示しています。

「顔」は仏様の顔の造形・表情に注目、
「装飾」は服装、アクセサリー、付属品に注目、
「動きとポーズ」は仏像の姿勢、ポーズに注目しています。


作品の作者、所在地、時代、制作方法などはバラバラです。
国宝級の有名仏像はなくて、
かえってそれぞれの像に先入観なしに向き合えました。

企画の狙いを生かすためにか
個性的な像が多かったので
むしろマイナーなものが多かったような印象です。


展示はテーマ別になっているし
それぞれの像の説明文の最後に「鑑賞のポイント」が一言で示してあるし
企画者の狙いがわかりやすく伝わり
満喫できました。

仏像ファン歴の浅い私がいうのも僭越ですが
仏像鑑賞への新しい眼が開かれる素晴らしい会だと思います。



それから、美術展として社会的意義が高い企画がありました。
東京藝術大学文化財保存学(彫刻)とのコラボ企画です。

複数の学生の研究が展示されていました。
内容は、有名仏像の模刻(模造)、傷んだ仏像の修復など。
作品の展示とともに研究レポートがパネル展示されていました。

学生たちは修復や模造を通して
制作者の思いを追体験することができたようです。


美術館の役割は、過去の作品を保管展示するとともに
これからの美術・芸術を創作し守っていくことにもあると思います。

美術館が果たすべき社会的役割の一つの姿を示した
素晴らしい企画です。







                               展覧会の図録
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美術展の図録は基本的には買わないのですが
この会についてはさらに勉強したいと思ったので
購入しました。