仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「イン・ザ・プール」 奥田秀朗

精神科医伊良部シリーズ第一作です。
短編が5作収められています。
このシリーズ二作目の「空中ブランコ」で直木賞を取りました。
 
 
  主人公?伊良部は大病院の息子で精神科医
  幼稚でだらしなくマザコンで、とても医者とは思えない。
  言動は天然そのもの。
  そんな伊良部のもとに悩める患者たちが訪れる・・・・。
 
 
 患者一人につき一作という短編集形式です。
伊良部は、患者に医者の診察とは思えないような対応をしますが、
なぜか患者は治癒していくのです。
伊良部のワガママとしか思えない行動が治療につながってたりするんですね。
語りはすべて患者なので、伊良部が本当に考えていることは
わからないのがおもしろい所。
 
 
 表題作「イン・ザ・プール」の診察場面から引用します。
ストレス性の体調不良の患者に対して。
 
  「言っとくけど、聞かないから」伊良部が言った。
  「はい?」
  「ストレスの原因を探るとか、それを排除する工夫を練るとか、そういうの、ぼくはやんないから」
  「はあ」
  「ほら、最近よくテレビでカウンセラーが患者の悩みを聞いて励ましたりするシーンとかあるじゃない。
   ああいうの、何の役にも立たないことだから」
  「・・・・そうなんですか」
  「そう。だいいち聞いてどうなるの。実はあなたが過去に人を殺して苦しんでいるとしたら、自首を勧めるか
   口止め料を要求するか、ぼくにできることがそれぐらいしかないでしょう」
 
 
 現実のお医者さんの発言だったら大問題でしょうけど、一理ありますよね。
ストレスの原因が改善可能だったら、病気にまでならなくて済むでしょうから。
 伊良部医師の診断はいつも現実的判断にもとづくもので、おっもしろいんです
 
 診察室にいるのは伊良部の他には、いつも看護婦のマユミちゃん一人だけ。
このヒトも、茶髪でボディコンで看護婦らしからぬキャラ。
無愛想だけど、時々ボソっと鋭い一言をもらすかっこいい姐さんです。
 
 
 
 
 
 
  
 「フレンズ」という話は、患者は高校生男子。
明るく社交的で友人の多い自分を装うために、ケータイ依存症になっている状態。
こういう子って、そこらじゅうにいるのかもしれないなあ・・・