仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「疑史世界伝」 清水義範

集英社から単行本が出ています。
文庫では、「シミズ式 目からウロコの世界史物語」というタイトルで出ています。
 
小説のジャンルに入れましたが、内容的には世界史入門で、一般教養書としてお勧めしたいです。
内容について、作者のあとがきから引用します。
 
 読みやすくて、面白くて、へーと驚いているうちに世界史がなんだか身近になってくる。
 この本を、面白く読めて、なんとなく世界史の輪郭が見えてくるという、 一石二鳥のものにしたかったのである。
 
まさにそうなっていると思います。
私は日本史は好きだけど、世界史は苦手です。地理に弱くて、国同士の位置関係がこんがらがっちゃうので。
勉強しなくちゃと思っても、苦手な分野って敷居が高くって
 
 
それから、「へ~!」 とびっくりしたのは
 
 イスラムの国に興味を持ち、そこを十カ国ほど巡ってみたのである。そして、旅先でその地の歴史を教わり、
 ・・・・・・・・驚いたのは、こんな歴史はこれまでに一度も習ったことがない、という事実であった。
 つまり我々日本人が普通学んでいる世界史とは、実はヨーロッパから見た世界史だったんだ、と気付い たのである。あの世界史は実は、世界史の半分らしいのである。もうひとつの角度から世界を見てみると、    これまで世界史だと思っていたものとはまるで違うものが見えてくる。そっちの見方も持っているべきではない  のか。 
 
 
 
19編の短編が収録されています。
それぞれ、ソクラテスイエス・キリスト、中国史中南米古代文明、オランダ、ナポレオン、ガンディーなど
がテーマになっています。
初めて名前を知った人物もいました。
話ごとに語り手や趣向を変えているのが、清水義範氏らしい技ですね。
 
 
 
特に印象に残った話は
 
 「夜の旅・昇天の旅」
 
これはイスラムの成り立ちを語った話です。
世界三大宗教キリスト教イスラム教・仏教)の中で、イスラム教だけは
日本人にとってまったくなじみがありません。
以前、勉強しようかと思い図書館で本を探しましたが、一般向けではない数冊しかありませんでした。
 
さらにややこしいのは、イスラム教とキリスト教そしてユダヤ教は、神様や聖人が重なっていたりする
関わりのある宗教だということです。
その違いがわかりやすく書いてありました。
 
   三つの宗教の違いが端的にわかるのは、イエス・キリストをどう考えるか、である。
   キリスト教ではイエスは神の子である。そしてこれはその宗教内でも説が分かれるところだが、
  神とイエスは一体だという考え方をすることもある。
   それに対してユダヤ教の側から言えば、イエスがただの人間である。妙な分派を作った者、というところ
  かもしれない。
   ところがイスラムにおいては、イエスムハンマドのひとり前の預言者である。そしてムハンマドが最後の   預言者なのだ。
 
 
 
 「フランクが来た」「おーい、サラディン
 
この二話には十字軍が関連しています。
高校の世界史の授業では、十字軍は宗教的使命感に基づいた、なんとなく良いことのように
教わりましたが、そんなことではなかったようです。
 
 
 
 「真理を持つ力」
 
非暴力主義の、インドの独立運動指導者マハトマ・ガンディー氏の話です。
ガンディー氏については常識的な知識しかなかったのですが
真に偉大な人物であることがわかりました。
 
氏の思想について引用します。
インドはイギリスに政治的に支配されていることが問題なのではない。・・・・・真の問題は近代文明にあるのだ。
 近代文明とは何か。それは肉体的欲望の増進を文明の表徴とみる思想に基づいている。西洋近代文明の基本 問題は、肉体的欲望を解放したことにある。無制限の生産をたたえ、無制限の消費を歓迎した。できるだけ手  足を使わずに遠くまで行くこと、できるだけ多くの種類の食べ物を食べること、できるだけ多くの種類の衣服を着 ること。このように肉体的な欲望をできるだけ満足させることを進歩だと考える思想では、真の独立はありえな  い。われわれが打ち立てるべきインドの自治とは、真の文明なのであり、真の文明とは、徳のありかという意味 である。真の文明は、肉体的欲望の自制に基づくものでなければならない。  
 
すごいです。
もっとガンディー氏について勉強したいと思います。
 
 
 
 
 
 
手元に置いて何度も読みたい本なので、買いに行きます。(読んだのは図書館の本)
ホントに目からウロコの本です。
みなさまにもぜひ、おすすめいたします!