「巨人の磯」 松本清張
5編収録の推理短編集(新潮文庫)
「内なる線影」
本筋とはまったく関係ないことで印象に残った作品です。
冒頭文
真夏の街では、冷房のきいたデパートやレストランや喫茶店やビルの廊下などは恰好な避暑地である。
だが、いくら快適でもそこは時間的な制約がある、レストランや喫茶店だと食事や飲みものが終わるや否や、 給仕女が皿やコップを間髪をいれずに引きにくる。店の回転率を上げるため、忙しそうにはしていても彼女らは 遠くから容器が空になるのを狙っている。・・・・・そこへいくと、ホテルのロビーは避暑地としてすべての好条件 を備えていた。
私、猛暑と戦っておりますが、耐えられない時は避暑に出かけます。
私の避暑地は、図書館やファミレスです。
ちょうど避暑中に、この文章に出会ったのでおかしかったです
「理外の理」
ある小説誌の編集者と作家をめぐっての、怪談めいた怖い話
この話も時期的にぴったりかも。納涼おばけ話ということで。
雑誌「J」はリニューアルのため、執筆者をいれかえることに決めた。
しかし、江戸の書籍から取材した随筆がうまい須貝玄堂は
あきらめずに何度も原稿を書いて持ってくる。
「これで最後」と持ってきた原稿は、
死に神のようなモノにとりつかれ、首をつりそうになった男の話だった。
最後の原稿を断られた須貝老人は意外とさっぱりした顔だった。
そして、死に神が出るかためしてみないかと編集者を誘う。
オチとしては怪談話ではなく、現実的な出来事が起こるわけですが
そこにいたるまでの展開がおどろおどろしい。
虚構と現実の入り交じったなんともいえない怖さで、涼しい気分を味わえました。