仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「ミスキャスト」 林真理子  [講談社]

三十八歳会社員 男性が主人公の不倫小説
 
 商社に勤める原岡は三年前、専業主婦の妻多恵子と小学生の娘奈美を捨て、不倫の末の再婚をした。
 今の妻典子は映画や本、コンサートのPR会社に勤めるキャリアウーマン。劇的な再婚から三年が経ち
 原岡は今の生活に不満が生まれている・・・。
 
 
こないだ東野圭吾さんの不倫小説「夜明けの街で」を読んだら、
比べてみたくなり読み返してみました。
 
女性(林真理子氏が、というべき?)が書いているだけあって、自己陶酔的ムードは少なく
めっちゃ手厳しい書き方です
 
 
原岡が今の生活に不満を感じる原因は、妻が家事に力を入れないので
家庭の居心地が良くないことからです。
前妻は家庭的で、何時に帰っても温かい食事を出してくれていましたが、
今の妻は仕事に忙しく、平日に夕食を作ることはありません。
失ってみて初めて分かる(前妻の)有り難さといった所でしょうか
 
そんな中、原岡は若い女性二人と浮気をするチャンスに恵まれます。
一人は、同じ課の派遣社員祐希。彼女は婚約者がいますが、
結婚前に遊びたい、と積極的に誘ってきます。
 
もう一人は、前妻多恵子の姪である美佳子。ローカルテレビの契約アナウンサーの彼女を
東京のテレビ局関係者に紹介したことから、関係が始まります。
 
原岡は同時並行で二人と関係を続けますが、祐希とは彼女の結婚が早まったことで
終わります。原岡との浮気が婚約者にばれて、結婚は破談になるのですが。
 
 
原岡はそれでも悔い改めたりはせず、美佳子との関係を深めていきます。
妻典子の浮気を疑いはじめると、自分のことは棚に上げ腹を立てています。
「そもそも男と女の浮気など、根本からしてまるで違うのだ。お互いに心に負担をかけない肉体だけの楽しみ、  という高等なことが出来るのは男だからだ。」
などとのたまっています   
このセリフ、男性作家が書いていたら、めちゃくちゃムカツいただろうなあ(笑)
 
 
最期には、美佳子のことがお互いの家族にばれて、妊娠中の妻典子と離婚し
精神的に弱い美佳子と再婚しなければならない所においつめられます。
 
典子は原岡との結婚前に自分の母親に
一度、他の女のために奥さんを捨てた人は、二度三度同じことをするって。」と言われたと語ります。  
 
 
原岡という主人公は、「目先の快を追う」というか、不愉快なことから目をそらすために
後先考えず自分に都合の良い判断で行動し、のっぴきならない状況に自分を追い込みます。
ここまで徹底的に描かれると、腹立つを通り越して笑っちゃいました