仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「坂の上の雲」  司馬遼太郎

明治当初から日露戦争終結までを描いた長編歴史小説
 
日露戦争で活躍した秋山好古(騎兵)・真之(海軍参謀)兄弟と、文学者正岡子規を中心として
明治の日本国の時代を描いた大作です。
 
去年のNHKドラマは名優勢揃いで見応えありました。今年の続編が楽しみです。
子規の妹お律と真之の恋など女性向けの演出が加わっているのが甘ったるいですが
NHKも視聴率取らなきゃいけないから仕方ないですかね。
 
冒頭などドラマのナレーションでは原文をそのまま使っていたりします。
  「まことに小さな国が、開化期をむかえようとしている。」
読んでいると、あのナレーターの声が耳に聞こえてくるようです。
好古兄さんは阿部寛、淳さんは本木雅弘、と完璧にイメージができちゃってます
 
 
日露戦争は日本が泥沼の軍国主義にはまっていくきっかけになったことを思うと
あんまりおもしろがるのもどうかという気持ちもありますが・・・
戦闘シーンは苦手で読み飛ばしちゃうので、後半になるほど内容がわかってなかったりします
 
 
 
どこが良くて読むのかというと
   秋山好古(よしふる)です!
もう、超タイプです
「最後の古武士」と呼ばれたダンディズムが最高です。
 
十歳にして生まれたての弟真之(さねゆき)を守ってやる男気。
「男にとって必要なのは、若いことにはなにをしようかということであり、老いては何をしたかということである
」「男子は生涯一時をなせば足る」というポリシーを持ち、
「身辺は単純明快でいい」と兄弟二人暮らしで茶碗を一つしか持たないような生活。
仕事を成すには家庭は邪魔と、晩婚でした。
 
何よりかっこいいのは、それが生まれつきの性行ではなく、自らを律した上での生き方だったであろうことです。
日露戦争後、好古は軍部で出世して権力をにぎるような道に進まず、中学校長となります。
福沢諭吉を敬愛し子弟を慶応に入学させ、あえて軍人にはしません。
 
 
次には、正岡子規です。
彼の俳句、短歌界での文学史上に残る業績は興味深いです。
 
そして秋山真之
好古との兄弟関係は心温まります。
日露戦争における彼の作戦立案、采配ぶりがこの小説のクライマックスの見所です。
好古の騎兵隊の指揮ぶりと合わせて、戦闘シーンを読み味わうのが
正しい読み方なのでしょうね
 
 
 
 
それから明治の新生国家の息吹も快いです。
個人の立身出世が国家の発展につながることをだれも信じ、明るい抱負を持って
若者が進んでいます。
昨今は学校批判が当たり前になっていますが、社会に明るい展望があれば
学校体制に不備があろうとも、若者は勉強するものです。
 
文明が爛熟し社会が停滞してしまっている日本に暮らす現在、
この清心の空気に羨望を感じます。
帝国・軍国主義の世に戻って欲しいとは決して思いませんが。