仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

『そりゃないぜ BABY 』 立野真琴

 

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白泉社漫画文庫全6巻
15年ほど前の少女漫画。 イレギュラーな家族の愛情を描いたホームドラマ
 
 石野桃子(18歳)は、美形小説家 原敬四郎(28歳)の家政婦として住み込むことになった。
 彼の家には4人の子供達がいた。
  長男こだま(中3)、次男ひかり(中2)、三男のぞみ(小4)、末っ子の娘あさひ(小3)
 ドタバタした日常を過ごしながら、彼らは家族としての関係を作っていく・・・・。
 
 
四人の子供達は敬四郎の姉の子供。6年前姉夫婦が事故死した後、甥姪を引き取ったのでした。
敬四郎自身も両親を早く亡くし、九歳上の姉と二人きりの家族でした。
桃子は出版社社長の娘で裕福な家庭に育ちましたが、放任な両親の下で淋しい子供時代でした。
こんな6人がハプニングも乗り越えながら、暖かい家庭を築いていきます。
桃子・こだま・敬四郎の三角関係が元で一度は家庭崩壊しますが、ハッピーエンドです。
 
 
ありえないような設定ですが、描いているエピソードは地味な家庭生活が多くて
しみじみ和みます。
主人公桃子の話ばかりではなく、4兄弟それぞれが主役の回、学校が舞台の回など
バラエティのあるストーリーが楽しめます。
 
兄弟妹それぞれの立場ゆえの心情とか、
女の子がバレンタインやおしゃれにかける情熱とか、
優等生の小学生が宿題を忘れて怒られるのを怖がる気持ちとか、
いろいろな人間の繊細な心理がしゃれた表現で描かれている所が魅力です。
 
この作家の作品は、舞台設定は芸能界とか水商売とかが多くて
チャラチャラしてる感じなのですが、
描いているテーマは、誰もが抱えるせつない感情とか
地味で心温まるものなので、そこが好きです。
 
 
 
 
大人になってから読み返してみると
この作品の描く「家庭」がしっかりしていることに気付きました。
 
まず子供達に食事をきちんと取らせています。
話の中で、桃子が急に不在になったりすることが起きますが、
かならず食事の用意をどうするのかが確認されます。
適当に何か食べておけ、ということにはなりません。
 
大人の留守中に、空腹のあさひがカップラーメンを作ろうとしてやけどする事件が
あります。その辺にあるお菓子で空腹を満たすという習慣がないのですね。
主婦不在の家庭で、敬四郎お父さんはがんばったんだなあ。
敬四郎が桃子さんの愛情を指して「温かい笑顔と温かい食事」と言った表現が好きです。
 
 
それから大人がきちんと子供をしかります。
こだまとひかりがタバコを吸っていた時、敬四郎はゲンコツを食らわせて
ビシっと叱ります。
実は男の子達の成長を感じてうれしく思っていたりするのですが
本人たちに対してはそんな顔は見せません。
 
お正月に親戚のおばさんが遊びに来た時
おせち料理は飽きた」という子供達を「わがままだ」としかります。
すると敬四郎は「おばさんのいう通りだ。食べなさい。」とぴしっと言います。
これが親のあるべき姿ですよね。
 
たった15年前なのに、やっぱり家庭や社会の教育レベルが
こんなに変わったんだと改めて思いました。
一昔前の本の中で、育児放棄している親を表して
「食事さえさせてればいいというものじゃない」というのですが、
今ではそれさえしない親が珍しくないくらいです。
 
 
 
 
 
あと、桃子さんの働きぶりに脱帽です
子供四人(うち二人は男子中学生)の食事・洗濯の仕事量だけでもなかなかだし、
その上家長は居職。一日中家にいて仕事してて生活が不規則で精神労働。
気を遣わせられます。
この家の主婦って大変だと思います
ああ、見る目がおばさん目線だわあ
 
 
敬四郎が亡き義兄のことを語ったとき
わざわざ「JR職員の・・」と職業名を付けていたのに
違和感があったのですが、
それは、子供の名前を新幹線にしたことの説明だったんだと
最近気付き、笑いました
 
 
 
 
 
ところで、最近
漫画文庫で昔の作品が読めるのはうれしいのですが、
表紙を新しく書き下ろすと、当時の絵と全然違ってたりして
ちょっと詐欺だと思うのですが。
新しい表紙の方がうれしいという読者が多いのかなあ。