仁美のヒトミ

趣味(読書、芸術鑑賞)の記録を主に、日々の雑感などをつづります。

「風姿花伝(フウシカデン)」  世阿弥  [室町時代]

能楽の大成者 世阿弥(ゼアミ)の最初の伝書。
世阿弥能楽論をまとめた書物。別名「花伝書
 
 
岩波現代文庫 「古典を読む 風姿花伝」   馬場あき子著     で読みました。
歌人の馬場あき子さんは、能楽の信奉者として世阿弥をたたえる論調で書いています。
 
内容としては、年齢ごとの稽古の注意点、演技技法、能楽者としての心構え、
芸術論など数項目に渡っています。
能楽に限らず、芸の道に携わる方であれば意義深い書物です。
この書を読んだ方は少ないと思いますが、出てくる言葉には意外と聞いたことのあるものが
あるかもしれません。
 
 
 
この書のキーワードは「」です。タイトルにもついています。
「花」という言葉がくりかえし出てきます。
「時分の花」「まことの花」「身の花」「よそ目の花」「声の花」「幽玄の花」
実にさまざまな言い方をしています。
 
「花」とは○○のことだ、という明快なまとめをした記述はなく、
花とは何なのか、読み進めながら自分で理解していかなければなりません。
いろいろな角度から「花」が論じられているので、頭が混乱してきます。
禅問答をしているような。
 
「花を知る」ことが能の奥義を究めることだと馬場さんは述べています。
「花」とは~だ、と答えられれば、この書を理解し能楽をつかんだと言えるでしょうか。
私は最後まで読んでみて、なんとなくわかったようなわからないような気持ちです。
 
でも、それでよいのだと思います。
「言わぬが花」ということわざもあるように
日本文化においては、曖昧でぼんやりとしたものに美や価値を感じます。
日本文化の代表の一つである能楽の奥義が、明確に定義づけられないものであることに
日本的な美を感じます。
 
 
もっとたくさん能の舞台を見に行った後でまた読んでみたら
新しい発見がありそうです。
 
 
 
 
 
     【名言集】
 
・上手は下手の手本、下手は上手の手本。
 
・年々去来の花を忘るべからず。
 
秘すれば花なり。秘せずは花なるべからず。
 
・人々心々の花なり。いずれを真とせんや。ただ、時に用ゆるをもて、花と知るべし。