「大きな音が聞こえるか」 坂木司 (角川書店)
久しぶりに好きな小説家が増えました。
坂木司氏です。
この方はプロフィール非公表で性別もわかりません。
私は女性と推測します、文体から。
以前に「和菓子のアン」を読んでおもしろかったけど
ちょっとキャラを作りすぎで、漫画かラノベっぽいと感じられて
若者向けだな~と感じていました。
思い立って他の作品も読んでみました。
4、5冊読んでみましたが
「良い」と思ったのがこの「大きな音が聞こえるか」です。
キャラ設定が自然に感じられました。
主人公の父だけ造りすぎかなと思ったけど
一人くらいなら許容範囲です。
内容は男子高校生の成長ストーリーです。
恵まれた家庭環境に育ちながらも、なんとなく人生に不満がある
泳(えい)が、アマゾン川でサーフィンをするという体験を通して
大人へと成長するという物語。
一つ一つのエピソードが最終的な成長につながっていくという流れに
説得力があります。
佐藤多佳子氏の「一瞬の風になれ」を思い出すような
青春ストーリーです。(ちょっと路線はちがうけど)
思春期特有の視界の狭さや未熟ぶりが、むず痒いです。
でもこの主人公は己の至らなさを自覚しても必要以上に
自己嫌悪に浸ったりはしないところが重くなくてよいです。
この作家さんはストーリー設定の着眼点など
良いものをもっていると思いますが
まだ浅いかな~と思います。
登場人物の造形が。
まだ(作家としては)若いので
年齢とともに深まっていくことを期待します。